第9回 NPO多文化共生プロジェクト                         「日本で外国人も一人の人として幸せに暮らせる社会をめざして」


 私たちは「在住外国人が自分らしく暮らせるような小さな支援を行う」をミッションとして、2016年1月に団体を設立しました。そのきっかけは、2011〜2012年度に福岡市で暮らすイスラム教徒を対象に生活場面に基づいた日本語クラスを開講したことです。彼ら/彼女らの中には、例えばチョコレート一つ買うときに原材料を確認できないため、欲しいものを断念する人もいました。したがってその場面で、原材料を記した漢字が読めたり、読めなかったら問い合わせができたりする日本語能力を育成する教室活動を行いました。現在の「参照枠」や「生活Can do」に通じるものです。

 

 その後、2016年度〜2018年度は、文化庁委託事業「生活者としての外国人」のための日本語教育事業(以下、文化庁事業)を受託し、福岡市内、春日市、糸島市でこの生活場面に基づいた教室活動の普及に取り組みました。2019年度以降は、地方公共団体の地域日本語教育施策を後押しすることに取り組んでいます。例えば2019年度は、福岡市西区と連携して九州大学が移転した元岡地区の元岡公民館での教室開設に携わりました。そして2020年度は文化庁事業を通し福岡市が「地域日本語教育の総合的な体制づくり推進事業」を行うための基盤をつくったり、古賀市の多文化共生係と連携して古賀市内で教室を開設したりしました。

 

 また「ワールド・トークフォークダンス(外国人×日本人のしゃべり場)」を企画・提案し、福岡市、古賀市、佐賀県吉野ヶ里町と共同で実施しました。現在、私たちは地方公共団体が取り組む地域日本語教育に日本語教師をつなげることにも取り組んでいます。2020〜2022年度に福岡県が取り組んだ直方市、古賀市、苅田町の日本語教室の開設事業や2022〜2024年度に福岡市が取り組んだオンライン授業では、私達とつながりを持った日本語教師が活躍しました。地域日本語教育に日本語教師がどのように携わっていくかは、最もホットなテーマの一つと言えます。

 

 最後になりましたが、私たちのミッションを集約した教材である『生活者としての外国人向け 私らしく暮らすための日本語ワークブック』が2021年3月にアルクより出版されました。各地域での活動がより充実したものとなる一助になればと思います。

 

当団体HP  https://npo-tabunka.com/

 

 

(文:NPO多文化共生プロジェクト 深江新太郎) 

 

福岡県直方市の企業連携による教室 
福岡県直方市の企業連携による教室 
イスラム教徒を対象にした教室活動
イスラム教徒を対象にした教室活動
福岡市南区で開催された外国人×日本人のしゃべり場
福岡市南区で開催された外国人×日本人のしゃべり場
2021年3月に出版された地域日本語教育の教材 
2021年3月に出版された地域日本語教育の教材